夏の夕方、激しい夕立が通り過ぎると、街はひと息ついたように静まります。窓を開け放てば、雨に冷やされた風が部屋を抜けていき、ベランダの手すりにはまだ雨粒が光っています。濡れた傘をたたみながら、友人たちが次々と玄関をくぐります。今夜の一本は、ロワールでカベルネ・フランを主体に造られる、ソーミュール・シャンピニー。少しだけ冷やしてテーブルに出します。
ソムリエナイフを手に取ると、黒いハンドルの上を白い筋が走っています。さっきまで空を裂いていた稲妻を、そのまま封じ込めたような模様。けれど、この模様を描いた人はどこにもいません。固まる前のアクリルが流れるにまかせて残した線で、夕立を降らせる雲と同じく、誰の思いどおりにもならないものなのです。手のなかで傾けると、筋は前に浮かび上がっては、また黒の奥へ沈んでいきます。
乾杯のあと、ソムリエナイフは友人たちの手から手へと渡り、ひとしきり品定めが始まります。白い筋に何を見るかは人それぞれ。稲妻だと言う人もいれば、墨流しのようだと言う人もいるでしょう。光沢のある黒は、のぞき込む顔を鏡のように映し、ステンレスの口金もまた、同じように光を返します。おしゃれなソムリエナイフとは、見る人ごとに違う景色を思い描かせてくれるもののことかもしれません。
白にするか、赤にするか。白・赤・黒の三色を何度も見比べて、迷った末に選んだのがこの黒です。ワインに目のない友人へのプレゼントにしても、迷いながら選んだその時間ごと、このワインオープナーを手渡せます。夕立が上がった夏の夜には、これから毎年のように、白い筋の走るこの黒いハンドルがテーブルに並ぶことでしょう。

ラギオール ソムリエナイフ、黒アクリルハンドル














